大阪府は、以前から他の都道府県よりも高等学校の”授業料の支援”などに力を入れてきました。
この目的は大阪府のホームページにこのように書かれています。
1.自由に学校選択できる機会の保障
2.公私の切磋琢磨による大阪の教育力の向上
この制度について、「本当に”完全無償化”なんて実現できるの?」と思っていた方も多いと思います。
しかしながら、8月下旬には大阪府内の公立・私立高校において「”所得制限無し”での”授業料無償化”」されることが決定しました。
今回は、この制度について、過去の制度との比較や大阪府としての財源確保の方法などについて、FP目線を含めてで解説していきたいと思います。
現在の高校授業料無償化制度
まずは、現在(2023年9月現在)の高校における支援制度について説明します。
これまでも、大阪府内では高校授業無償化に向けた取り組みが実施されていました。
2010年からは大阪府内の私立高校についても無償化(公立高校と同等の制度)されることとなったため、学校を選ぶ自由度がかなり高くなりました。
この制度は、国が支出する「高等学校等就学支援金」に大阪府独自で授業料の支援を行うことで実現しています。
制度の中身は異なりますが、国の支援金に上乗せして支援を行う制度は、多くの都道府県で実施されています。
この支援制度は、学校選択の自由度が高まるいい制度ですが、「所得制限がある」ということが、ずっと問題視されていました。
この制度の所得制限は、保護者の所得合計によって、
・590万円未満→保護者負担0円
・590万円以上910万円未満→段階的に保護者負担が増える
・910万円以上矢印→全額保護者負担
となっています。
「収入が多い家庭には負担してもらったらいいのでは?」
と思う方も多いと思いますが、
・夫婦共働きの場合など、所得の計算が煩雑である
(申請しないと制限にかかるかどうかがわからない)
・高校教諭の事務作業に手間がかかる
という、家庭の負担めん以外の面で課題がありました。
今回の新たな制度では「所得制限を撤廃」するためこれらの課題が解決されることとなります。
新たな高校授業料無償化制度
続いて新たな無償化制度について説明します。
新たな制度はとても分かりやすく、「所得制限無しで授業料が実質無償になる」というものです。
スケジュール
この制度が開始されるのは来年度(2024年度)から適用されますが、導入は段階的になることには注意しないといけません。
無償化の対象となるのは下記の学年となります。
・2024年度:3年生
・2025年度:2・3年生
・2026年度~:全学年
来年度の新入生には適用されないという点は特にご注意ください!
課題
大阪府内で高校進学を待つ子供がいる家庭にとっては、とても良い制度ですが課題も見えています。
・大阪府の子供が大阪府以外の私立高校を受験する意識が低下する
→大阪府外の私立高校でも無償化になるよう調整(交渉?)しているようです
・私立高校の人気が高くなり、公立高校の人気の低下(≒レベルの低下)が懸念される
これらの課題解決に向けて、知事の手腕がためされるところですね。
無償化に必要となる費用
今回の制度を行うためには、当然追加費用が必要となります。
府の財政負担はおよそ382億円を超える見込みだということです。
2022年の大阪府における授業料支援負担額は320億円ほどだったので約20%もの増額となります。
少し細かくシミュレーションしてみたいと思います。
厚生労働省の「世帯所得分布(2018年度データ)」から、現在の無償化制度における分布が推測できます。
・600万円以下 64.6%程度
・600万円〜900万円以下 19.1%程度
となっていることがわかり、910万円以上の世帯は15%程度と推測できます。
この割合から、増加する費用を計算すると約60億円となり、シミュレーションをしてみても大阪府が見込んでいる負担想定額(383億円)がだいたい合っていることがわかります。
財源確保
それでは、増加する費用に対して、どのように財源確保を行うのでしょう。
もちろん、財政内での調整も視野に入れて調整を行うようですが、興味深い取り組みとして「母校応援ふるさと納税」という仕組みを来年度から開始するようです。
これは「ふるさと納税」と同じ仕組みを使って、卒業生やその家族が母校に寄付できる仕組みです。
この仕組みであれば、積極的に寄付しようと思う多いと思われます。
おそらく返礼品などはないですが、2,000円以上の寄付分については寄付金控除となるので負担は少なく母校に貢献できます。
さいごに
今回は、2024年度から大阪府で始まる予定の「高校授業料の完全無償化」について、解説しました。
財源の確保については今のところ不透明な部分もあるようですが、今後の日本・大阪を支えてもらわないといけない学生にとって、とてもいい制度と考えているので、ぜひ行政にがんばって継続していただきたいと思います。
最後までお読みいただきありがとうございました!
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